労災の請求(怪我の場合1)
私は、土木会社に勤務していて、建物などのコンクリート基礎工事を担当しています。
先日、社長に頼まれて、うちの会社がコンクリート基礎工事をした一般住宅の建築現場に行きました。現場に行くと、現場監督から、仕上げ段階で急に屋根の清掃作業員が必要になったと言われて、私が屋根に上って作業をすることになりました。特に準備らしい準備もせず、言われるままに屋根に上って作業をしていましたが、朝露で滑って、転落してしまいました。
足を負傷し、治療が一段落した今も足をつくと痛くてたまりません。
労災事故として治療費と休業補償の一部、後遺症に対する補償の一部は認められましたが、社長や現場監督からは、私のミスだから、会社や元請は責任がないと言われました。本当に、会社や元請の責任はないのでしょうか?
会社には安全配慮義務があります
会社(使用者)は、業務に当たって従業員(労働者)の生命・身体を保護すべき義務(安全配慮義務)を負っていて、安全配慮義務に違反したと認められる場合には、国の労災給付とは別に会社が民事上の損害賠償責任を負います。
会社が安全配慮義務を尽くしている否かの判断要素としては、①危険防止措置の要否・有無、②安全衛生教育の要否・有無及び保護具の支給要否・有無、③助手の配置の要否、等が問題になります。
危険防止措置が問題になります
ご相談の事例では、高所での作業であり、屋根から転落の恐れがある事例ですので、危険防止措置(安全ネット、足場、命綱等)を講ずる必要がある事例だと思われます。
したがって、通常は、危険防止措置を講じていなかったので安全配慮義務を欠いていたと評価され、会社は損害賠償責任を負うことになります。
転落したことにあなた自身のミスがあったかどうかは別途検討する必要がありますが、あなたにミスがあったからといって、会社の安全配慮義務違反が免責されるわけではありません。
ただし、あなたにもミスがある場合には、賠償額が減額されることがあります。
元請会社に対する損害賠償請求もできるでしょう
なお、安全配慮義務は、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間」の義務なので、義務を負うのは直接の使用者に限らず、作業現場で指揮命令をしていた元請業者も直接の使用者とは別に安全配慮義務を負います。
したがって、ご相談の事例でも、現場監督が所属する元請会社に対して、責任を追及できるでしょう。
納得いく解決をするためには、専門家の相談を受けることをおすすめします。